サラリーマンであれば、会社で年末調整をしているため、確定申告を自分ですることはあまりないかと思います。
ですが、受けられる控除を適用すべく自分で確定申告することで、納付する税額を少なくすることが可能です。
そのようなサラリーマンが確定申告で控除できるものについて、今回はご説明したいと思います。
一時期、”スーツ代も経費で落とすことができる”と言われていたため、ご存知の方もいるのではないでしょうか。
これは特定支出控除といい、サラリーマンは確定申告することで控除を受けることができます。
スーツ代の他にも、接待などの飲み代や転居の必要な転勤をした際の支出、職務に必要な研修や図書への支出、資格を取得するための支出も控除とすることが可能です。
それでは、この特定支出控除とは何か、詳しく見ていきましょう。
特定支出控除とは、確定申告で給与を計算する際に、職務を遂行する上で支出した金額で控除として認められるものです。
特定支出の合計額が、給与所得控除額の1/2を超えて125万円以下までは、確定申告により給与所得の金額から控除することができます。
この特定支出控除にできるものとして、以下のものがあります。
通常、必要と認められる通勤のための支出
転勤に伴う転居のために、必要と認められる支出
職務に必要な技術や知識の習得を目的とした研修を受けるための支出
職務に必要な資格を取得するための支出(弁護士・公認会計士・税理士の資格取得も対象)
単身赴任などの場合、勤務地や居所から家族のいる自宅を移動するための支出
職務の遂行上に必要なものとして、給与などの支払い者による証明を受けた以下の支出
*図書費
書籍や定期刊行物、その他の図書で職務に関連する図書を購入するための支出
*衣服費
制服・事務服・作業服など勤務場所において着用が必要とされる衣服を購入するための支出
*交際費
交際費や接待費、その他の支出で、給与など支払者の得意先、仕入先など職務上関係のある者に対する接待や供応、贈答、これらに類する行為のための支出
特定支出控除を受けるためには、適用のための手続きを行って確定申告を行います。
先述した職務における特定支出の領収書など、明細書と給与を支払っている者の証明書を集めておくことが必要です。
それら領収書などの書類を、確定申告書の作成をする際に添付、または提出の際に提示して控除を適用します。
このサラリーマンであれば適用したくなる特定支出控除ですが、この控除をなかなか聞かない、または適用している人が少ない理由をご存知でしょうか。
特定支出控除は、意外と幅広く控除を受けられるように思いますが、実はとても適用が難しいものでもあります。
適用を考える際には、明細書や証明書をしっかりと集めた上で、以下のことも考慮して適用するか考えておくと良いかもしれません。
先ほど、文章内で軽く触れましたが、特定支出控除は給与金額を元に適用できる額が決まっており、計算式では以下のように計算します。
特定支出控除額 = 特定支出額の合計額 – 給与所得控除額 × 1/2 ≦ 125万円
この給与所得控除額は、コラム「基礎控除や給与所得控除、公的年金など控除の改正(2019年度税制改正)」でご確認くださいませ。
計算されるとお分かりいただけたかと思いますが、所得が180万円の方で受けられる特定支出控除額は36万円を超えた場合です。
スーツ代や飲み代、研修費用、図書代を何でも控除できるとしても、年間にこれだけの支出を自腹ですることは少々難しいのではないでしょうか。
この特定支出控除を適用するためには、これらの領収書を取っておくことはもちろん、それらの支出が妥当かどうか給与を支払っている会社から認めてもらう必要があります。
また、図書費用と認められるものは専門書のみであったり、資格取得のための支出も決まりがあったり、細かい規定に基づいて判断されるため認めてもらえないことも多くあるでしょう。
特定支出控除は、所得を計算する上での控除であり、税額控除ではありません。
所得控除は、最終的な税額にさほど影響がなく、特定支出控除を受けるための支出から考えると、控除を適用して戻ってくる金額は少なくでしょう。
そのため、特定支出控除の適用を考えるよりも、日常の支出を減らしたりその他の住宅ローンの支払いを考えたりする方が、生活の総支出から見ると良いかもしれません。
サラリーマンで手元から支払うお金を減らしたいと考えた際には、まずは日常の支出を見直すことからお勧めいたします。
その上で、副業をして収入を増やすのか、控除を適用して税額を抑えるのか、ふるさと納税などお得な制度を活用するのか考えると良いでしょう。
会社からの給与以外の所得や、控除の適用、制度を活用する場合には、確定申告が必要となりますので、必ず行っておきましょう。
詳しくは、以下のコラムをご確認いただければと思います。
副業で業務委託契約やクラウドソーシングの確定申告はいくらから必要?
確定申告で副業収入や年金を雑所得として申告する際の計算方法、税率や控除など
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