税制改正の内容をまとめた2017年度「税制改正大綱」が発表されました。
主な項目として、所得拡大促進税制、相続財産の広大地の見直し、酒税の見直し、エコカー減税の縮小などです。
いくつか気になるところを見ていきましょう。
賃上げした企業の法人税を減額する「所得拡大促進税制」。
賃上げ率が高い企業ほど、減税額を拡大する仕組みに変更されるようです。
今回の税制改正大綱では、大企業並みの前年度比2%以上の賃上げを実施した中小企業は、賃上げ総額の22%分を法人税から差し引くとされています。
この改正により、中小企業による賃上げが進んでいくかもしれません。
相続税の財産評価の際に、面積が広い土地を最大65%も評価額を減らす広大地のルールも見直されることになりました。
これまでは、同じ面積であれば整形地でも不整形地であっても評価が同じでしたが、今後は、土地の形状も踏まえて評価されるようになるようです。
土地の形状や奥行きなどによって決められた補正率で、広大地を評価していくとのこと。
もしかすると、整形地については、それほど減額されない可能性もありそうです。
改正内容は2018年からの相続に適用されるようです。
今回の税制大綱では、移住後10年以内は日本の税金がかかるよう見直されるようです。
これまでは海外に住んで5年を超える人同士で相続や贈与をした場合、税金の対象外で、海外資産に対しては日本国内での相続税がかかりませんでした。
相続税がなく、または税率が著しく低い国や地域に移住を計画している人も多いかと思いますが、今後、5年が10年と変更になると、海外移住=節税対策とはいかないでしょう。
国境を越えた税逃れを防ぐ一環として、年数が引き上げられたのかもしれません。
環境性能に優れたクルマに対する自動車税、重量税、取得税が軽減されるエコカー減税。
現在、新車の9割が対象となっているところを、7割に対象を減らす方向で進んでいます。
地方の税収減を懸念して対象を絞り込みたい総務省と、新車販売台数を維持させるために減税対象を減らしたくない経産省が対立していましたが、最終的に新車の「7割」で落ち着きそうです。
また、適用基準が厳しくなりそうなため、現状より厳格化されると解釈していいでしょう。
お酒好きの多くが注目を集めていたビール系飲料の酒税の一本化については、今回は見送られました。ただ、2026年までの10年をかけて350ミリリットル缶1本当たりにかかる酒税を54.25円に1本化するようです。
とりあえず今後、段階的に実施されるようです。
ビールと第3のビール、それぞれにかかる酒税を比較してみます。(350ミリリットル1本当たりにかかる酒税)
【2020年10月】
ビール→70円
第3のビール→37.8円
【2023年10月】
ビール→63.35円
第3のビール→46.99円
【2023年10月】
ビール&第3のビール→ 54.25円統一
なお、現在税率がバラバラである日本酒、ワイン、チューハイも2026年までに段階的に調整されて、35円で統一されるようです。
高層マンションの評価額と時価の差を使った節税「タワマン節税」が富裕層を中心に注目されていましたが、今回改正へと進むようです。
これまでは、同じ床面積なら、1Fも最上階も税額は同じだったため、価格が高い高層階ほど、税制面で有利とされてきました。しかし改正後は、1棟の固定資産税額は変えず、中間階を基準として、1F上がるごとに増税、1F下がるごとに減税という具合になるそうです。(平成30年1月以降に引き渡す新築マンションが対象)
2017年度の税制改正大綱を見てみますと、酒税・エコカー減税など、消費者の生活に直接的な影響を及ぼしそうな改正はそれほど多く見られない気がします。
今回のコラムでは取り上げませんでしたが、配偶者控除の引き上げも注目しておきたいところです。今回は特に、相続財産の広大地評価方法の変更、賃上げによる法人税減額など、中小企業や資産家に関係のある税制が見直されたという印象です。
経営者や相続が発生しそうな方はぜひとも注目しておいてもらいたいです。
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